福島達也理事長コラム
第106号 法律の正しい作り方
 先月のコラムで、今回のNPO法改正と寄付税制の改正について、かなり過激に批判したので、相当おしかりの声が届くと思ったが、不思議と1件もなかった。やはり、私と同じく、今回の改正は「改良」ではなく「改悪」であると気づいた人も多かったのだろうか。

 法律を作る時はよっぽど気をつけなければならない例がたくさんある。

 例えば今回の震災だ。東日本大震災の被災地の復旧・復興支援を目的に始まった東北地方の高速道路無料化だが、これに便乗するトラックが後を絶たないらしい。無料で利用するトラックの約14%がインチキだったという報道があった。これでもわかるように、およそ7人に1人はインチキをする国民なのだ。法律を作っておいて、こういう問題が出ると慌てて改正するのが日本政府の得意技。中型車以上の無料化は当面8月末までで打ち切るらしい。

 まだまだある。21年に施行された改正国籍法では、日本人の父と外国人の母との間に生まれた子供の日本国籍取得の要件から、父母の結婚が削除され、認知届の提出だけで国籍を取得できるようになったのだが、日本人の男性が「認知した」と一言言うだけで日本国籍を取得でき、その母親は合法的に日本に滞在できるようになるという法案で、それまでも偽装結婚などの犯罪が多く摘発されてきたが、この法案施行後はその偽装結婚さえも必要がなくなったことにより、もはや違法な形で日本での在留資格を取るには何の障害もない無法地帯となってしまった事実がある。

 偽装ではないまじめな人たちには大変良い法律だが、それを悪用できることは簡単に想像できるはず。その後この手の犯罪が急増しているのは、悪用する側だけが悪いのではなく、悪用させる法律を作る方が悪いとさえ思ってしまう。

 これで法治国家とはあきれてものも言えない。やはり、法律は悪用させない手段を講じてから改正すべきであって、悪用されてからまた改正というのでは、それに翻弄される人たちがあまりにも不憫だ。

 そう考えると、今回の法改正も、気をつけたい点はいくつもある。寄付金3千円100人もいいが、本当に寄付者なのか、本当に出したのかをちゃんと調べるべきだ。自治体が条例で定めた寄付優遇のNPOは、天下りはいないのか、外郭団体ではないのか。仮認定というが、本当に仮認定しても大丈夫なほど活動実績や内容が充実しているのか。そのあたりを徹底的に調べてからにしないと、高速道路問題と同じことが起こるだろう。是非検討してもらいたい。




特定非営利活動法人 国際ボランティア事業団
理事長 福島 達也
(平成23年7月)

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