第38号 公益法人改革と寄附制度 |
「新たな非営利法人に関する課税及び寄附税制についての基本的考え方」が、税制調査会から発表されたのだが、これについて問題を提議したい。 今回の発表は、驚くべきことに、一般的な非営利法人制度の中で、新しく誕生する非営利法人は第三者機関によって公益性が認定されると、寄附優遇税制が自動的に与えられるという画期的な内容であった。今まで寄附税制に関して言えば、特定公益増進法人(現在約9千団体)や認定NPO法人(現在約40団体)にしか認められていなかったわけだから、かなり対象は広がることになる。 しかし、肝心の公益法人改革とその後の公益性の認定は一体いつごろ行われるのだろうか。予想では、公益法人改革は来年の通常国会で早々と成立するらしいが、新しい非営利法人の法律ができてから税法の整備があり、さらに、第三者による公益性の認定については、認定機関をつくるまでにも結構時間がかかるので、そこからさらに1年以上先になるであろう。つまり、新しい寄付優遇税制は早くとも2年後のことなのである。非営利団体にとっては喉から手が出るほど欲しい寄付優遇税制なのだから、もう少し早くに成立できないものだろうか。 いずれにせよ、これで寄附金を集めるという受け取る側の活動はやりやすくなるであろうが、問題は、出し手の側だ。日本では寄附というものが、まだ社会には定着していない。おそらく、これは税だけの問題でないと思う。つまり、寄付しないというのは税と関係ない動機もあるはずだ。アメリカでは大企業の社長は、毎年毎年かなりの金額を世界中の団体に寄附として出している。そしてそれが社会的に評価され、表彰や顕彰を受ける。これにより、また一般市民に評価されるのだ。日本ではたとえ寄付をしなくても不買運動などには発展しないし、寄付をしていても企業としての好感度はあまり影響しない。だから、寄付した企業や社長をきちんと評価して、表彰するような制度が日本でも必要なのではないだろうか。 |