第122号 今年も早かった?

 早いもので今年も最後のコラムとなってしまった・・・。
 立川志の輔さん曰く「小学校の時、15分の休み時間は5分に感じたが、嫌いな算数の授業は3時間に感じたように、充実しているから年月が早く進むのだ。」そうだ。確かに嫌なことは長く感じることが多い。例えば、嫌いな人に会わなければいけない日はなかなか到来しないが、楽しみにしていたデートはすぐに過ぎてしまうのだ。なるほど、そう考えると年月が早いのもなんだか楽しいではないか。よし、「今年も早いもので・・・」は、幸せの証拠だと思うことにしよう!

 さて、この12月1日でNPO法施行からちょうど15年が過ぎた。あなたにとって早かった?それとも長かった?

 「いやー、実に早かったなあ」でしょ(笑) 私も同じだ(笑)

 1998年(平成10年)12月1日、それはNPOにとって歴史的な日だった。私は当時、ある市の特別公務員という立場だった。なので、身近にNPOの存在を知っていたからこそ、この日が来るのが待ち遠しかった。いや早かったけど(笑)

 そして、わくわくする気持ちを抑えることができず、NPO法人の設立から運営に至るまですべてをサポートするワンストップサービスの必要性を感じ、日本で初めての完全有料での中間支援団体を誕生させたのだ。つまり、NPOサポートを唯一の職業にするという暴挙に出たわけだ。

 当時は、あまりにも突拍子もないこととして受け止められ、誰も真似しようとはしなかった。なので、2年間くらいはライバルも存在しなかったので、ヤフーで「NPO法人」と検索すると、一番先に、NPO法人設立運営センターという私の会社が出てきた。それも2年間くらい続いたことが懐かしい・・・。

 あれから15年・・・。夫婦でいえば、倦怠期を迎えるころだろうか。

 しかし、まだまだNPOは熱い!設立する法人もここにきて少し増えてきているようだ。もちろんそれは法改正で、手に届かなかった認定NPO法人が身近に感じられるようになったことも大きい。「仮認定」なんて言う制度ができるほど法律も柔軟になってきた。まさに新たな時代に突入した感じだ。

 確かに解散するNPOも多い。しかし、時代が変わってきているのだからNPOも変わって当然だ。IT業界では次々にヒットするメーカーが誕生し、変わり、そして消えていき、また生まれてくる。NPOも時代とともに生まれ変わったっていいだろう。

 そういう私も、NPOから業務をいただいてサポートするのが主な仕事だが、今度はNPO法人に助成金を配り、さらに、事業で高齢者や障害者のサポートをするようになっている。

 楽しいからこそ、あっという間に、そして年月が過ぎていくのだ・・・。

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成25年12月)

第121号 また法改正でまた定款変える!?

 内閣府から出された10月22日付の通達で、またまた福祉NPOに激震が走っている。
 というのも、本年4月1日から、「障害者自立支援法」が「障害者総合支援法」になったからなのである。当然ながら、この法改正で、原則としてNPO法人の定款内容に「障害者自立支援法」の用語を用いている場合は定款変更が必要となるのだ。そう、当然所轄庁への変更認証申請と、法務局での変更登記が必要だ。NPO法人にとって最も面倒くさい仕事のはずだ。
 そういえば、自立支援法が施行されたときも、定款変更を強制的にさせられたNPO法人にとっては「またなの?」と言いたくなる事態だ。区画整理時の住居表示の変更の時のように、法務局が勝手に職権で変えてくれたらいいのに・・・と思う人も多いだろう。
 ただし、法人が定款内容を変更する必要性がある場合でも、定款の該当部分に障害者総合支援法に定める事業が具体的に明記されていて、障害者総合支援法に係るものであると判断できる場合は、定款変更認証申請に一定の猶予期間が認められているのが救いである。一定の猶予とは、「他の定款変更が生じたときに、一緒にやればよいですよ」という程度のものだが。
 しかし、すべて猶予があるわけではなく、「共同生活介護」事業については、平成26年4月1日までに「共同生活援助」事業に一元化されることから、3月末までに定款変更が必要らしい。やっぱり、面倒くさいという声が聞こえてきそうである。

 そうそう、内閣府の通知では定款の条文を「障害者総合支援法」とすること、となっているが、自治体によっては法律の正式名称「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく…」という表記が求められることがある。東京都は「障害者総合支援法」でよかったが、市町村などでは正式表記が求められたという報告もあるようだ。
 所轄庁さん、そんなに固いこと言わないで、省略型でよいことにしてくれませんか?

具体例
以下の場合は、障害福祉サービス事業、相談支援事業という事業名により、障害者総合支援法に基づく事業であることが類推できるため、定款変更には一定の猶予期間が認められます。

【変更前】
定款第5条 この法人はその目的を達成するために次の事業をおこなう
 (1)障害者自立支援法に基づく障害福祉サービス事業
 (2)障害者自立支援法に基づく相談支援事業

【変更後】
定款第5条 この法人はその目的を達成するために次の事業をおこなう
 (1)障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス事業
 (2)障害者総合支援法に基づく相談支援事業


次の場合は、「共同生活介護」という事業名により、障害者総合支援法に基づく事業であることは類推できますが、来年4月1日より「共同生活援助」に一元化されるために、来年3月31日までに定款変更をおこなう必要があります。

【変更前】
定款第5条 この法人はその目的を達成するために次の事業をおこなう
 (1)障害者自立支援法に基づく共同生活介護事業
 (2)障害者自立支援法に基づく共同生活援助事業

【変更後】
定款第5条 この法人はその目的を達成するために次の事業をおこなう
 (1)障害者総合支援法に基づく共同生活援助事業


●NPO法に基づく定款変更申請の添付書類について
 NPO法人の活動や事業の種類の変更にともなう定款変更申請については、所轄庁の認証に加えて、添付書類として定款変更の日が属する事業年度と翌事業年度の2カ年分の事業計画書と活動予算書の添付が必要となります。
 ただし、障害福祉サービス事業や相談支援事業などという事業名により、障害者総合支援法に基づく事業があることが類推できる場合は、条件を満たせば事業計画書・活動予算書の添付を省略することができることとなっています。
 もちろん、この場合も、所轄庁が事業内容等の変更がないことを確認した場合に限ります。
 上記の例のように、法律名だけが変わっている場合は同じ事業であるとみなします。事業名も変わっている場合は、所轄庁に直接確認してください。

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成25年10月)

第120号 NPOバブルが来る!?

 内閣府が8月24日付で発表した「NPO法人に関する世論調査」が大変興味深い。

 NPO法施行から15年。NPOも相当市民に浸透して信頼を勝ち得ているやに思っていたら、何ともびっくりするような結果だったのだ。

 まず、「NPO法人のように社会のニーズや課題に市民が自主的に集まる取り組み」については「大切」と評価した人が計92%と、まあ、東日本大震災の影響もあるが、市民活動の一定の評価なんだなあ・・・なんて思っていたところ、「活動に参加したいと思う人」はなんと18%にとどまり、72%が参加に消極的だったのだ。

 それを受けて内閣府は、「社会でNPO法人が担う役割が増す中、行政が情報発信を強化するなど市民が参加しやすい環境を整えたい」としているが、情報があればどんどん参加するのだろうか。

 NPO法施行のころに比べると、調べようとすればいくらでも市民活動なんて転がっている感じだが・・・。

 気になる参加したいと思わない理由だが、「時間がない」44%が最多で、「機会がない」30%、「関心がない」24%と続いている。活動の原資になる寄付をしたいと思うか尋ねた質問でも「思わない」が62%で、「思う」23%を大きく上回った。

 つまり、「市民活動は大事だけど、時間もないし、お金もないし、寄付なんてしたくもない」という感じなのであろう。なんだかがっかりだ。

 前回の8年前の調査では「市民の活動が重要」は全体の80%だったから、これが92%に増えたと喜んでいいのか、しかし「活動に参加したいと思う」は前回が44%で今回が18%。この激減については、NPO関係者として猛省しなくてはいけないだろう。

 そこで考えたのだが、大学や高校では、単位の代わりにボランティアというのが流行っているが、いっそのこと「納税の代わりに市民活動」というキャッチフレーズで、一定の税金が減免されるというのはどうだろう。アメリカでよくある「社会貢献活動による刑の軽減」みたいだが、それよりももっと簡単だし安全だ。「参加する時間や機会がない」が参加しない最大の理由だが、これなら嫌でも参加する人が増えるだろう。ふるさと納税よりも効果覿面だ!

 きっと、経済界におけるオリンピックバブルよりも強烈で、市民活動参加者はおそらく百倍は増えるだろうし、市役所がいらなくなる時代もいよいよ来るだろう。私の夢である「NPOによる第2の市役所構想」がこれで実現できる。

 安倍さん、頼むよ!

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成25年9月)

第119号 NPOの一番いけないところ

 「NPO法人の一番いけないところ、足りないところは何ですか?」とよく聞かれる。

 あまりにもありすぎていつも困ってしまうのだが、実は簡単なところに大きな欠点があるのだ。それは、「連絡がつかない」ところだ。正確に言うと「連絡がすぐに取れない」ということなのだ。

 NPO法人も登記している事務所があり、届け出ている電話番号が必ず存在する。しかし、ホームページやパンフレット記載の電話番号に連絡しても、まず繋がらないのだ。

 会社だったらあり得ない話ではないか。

 会社の場合、営業時間中に誰も電話に出ないなんてことは、震災の時にしか経験はない。雨の日も風邪の日も、暑い日も寒い日も連絡が必ず付くのが日本の企業の特徴だ。

 しかし、そんな常識はNPOには全く関係ない。

 もちろん、大手のNPOや有名なNPOは事務職員が常駐しているのですぐに連絡がつくだろう。しかし、大方のNPOは事務職員が常駐していないどころか、ちゃんとした事務所を借りていないので、理事長などの自宅の電話番号が連絡先になっているところが多い。

 なので、外出しているときは電話が繋がらないというのが本当の話だ。

 もちろん、最近はメールをすることが常識的になっているから、電話なんて誰も出なくていいという意見もあるだろう。

 いやしかし、メールが使えない人もいるのだから、最低でも留守の時は携帯電話などに転送するようにして、必ず世の中でいう営業時間(10時から17時くらいまで)は連絡がつくようにしてほしい。メールだって、返事が返ってくるのが遅いのがNPOの特徴で、その日に返ってくるなんてことはまずありえない。次の日ならいいが、次の週だったりすると、もうメールをする気にもならない。

 そのあたり、NPOは十分気を付けてほしい。NPOだからしょうがないなんて甘えないで、企業のように社会のマナーはわきまえるべきである。

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成25年8月)

第118号 新しい公共ってどうなった?

 NPO業界では大騒ぎだった「新しい公共」政策だが、最近トンと聞かなくなった。

 新しい公共とは、今まで公共サービスとして、行政が担ってきたサービスを市民自身やNPOなどの非営利セクターが主体となって提供するような社会システムのことで、民主党政権時代に、悪名高き「鳩山由紀夫」首相が平成22年1月29日の施政方針演説ではじめて使った「新しい公共」という言葉を取り上げ、国家戦略の柱としたもので、その後、この「新しい公共」という考え方やその展望を市民、企業、行政などの社会に広く浸透させ、これからの日本社会の目指すべき方向性やそれを実現させる制度・政策の在り方をすべて見直そうという、すべての政策の根本原則にしようとしていたほど、力を入れていたアレである。

 あんなに力を入れていたのに、民主党の没落とともにまったく表に出てこなかったのだ。

 昨年末の政権交代で、深く海に沈みこみ、そして、今回の参議院選挙を経て、とうとうお墓入りしてしまいそうなのだ。

 今年虫の息となっていた最後の予算(NPOへの聞き取り調査6千7百万円)も、とうとう7月26日、財務省は、国の予算が適切に使われているかどうかを調べる予算執行調査の結果を発表したのだが、その中で「調査対象の選定基準があいまいで効果的な調査になっていない」と指摘し、「廃止を念頭にした見直し」となってしまったのだ。

 しかし、詐欺のような民主党の政策の中では、この政策だけはそれほど悪くなかったと思う。これまでの公共サービスは、行政が管理的に提供する立場、市民は供給される立場であったが、少子高齢化で、そのままでは公共サービスはパンクしてしまうことは誰でも簡単に予想できた。

 だから、新しい公共では市民も公共サービスの提供者となり、行政は市民に場を提供し、信頼し、権限を移譲するということになっていたのだ。そこには、民間の力で少子高齢社会の難局を乗り越えようという意気込みがあった。

 しかし、選挙は厳しい。「民主党憎けりゃ袈裟まで憎い」という感じで、民主党肝いり政策はほとんどすべてお墓入りになるのだ。あー無情!

 これでまた公共事業に頼る「バラマキ」政治の復活なのか・・・。頭が痛い。

 あれだけ大勝した自民党安倍政権だったが、大勝利後も株価は低迷し、円高は進行し、このままでは景気もまた悪くなり、来年の消費税UPはどうやら雲行きが怪しくなってきた・・・。

 一体、この日本、少子高齢社会はどうやって乗り越えるつもりなのだろうか?

 またしても宿題の日々に戻ってしまった感じだ。

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成25年7月)

第117号 NPOは本当に私募債していいの?

 NPO法人は非営利団体だから、出資を募ることはできないのは有名な話だ。

 だから、施設を改装するときなど、大きなお金が必要な場合、銀行も貸してくれないので、途方に暮れてしまう法人も多い。

 寄付金を募っても、なかなか集まらないのが現状である。なので、代表が仕方なくお金を立て替え、いつか返してもらうつもりが、いつになっても利益が残らないので、結局借金は自ら踏み倒して、チャラにする・・・なんてことは、NPO法人なら当たり前の話だろう。

 NPO法人の言いだしっぺは、どこも代表者や理事がお金を負担しており、どこかの天下り法人のように、理事報酬がたっぷりもらえるということはまずない。それがNPO法人の悲しい現実である。

 しかし、何としてもお金が必要なあるNPO法人が、ある時「私募債」というのを始めたのだ。今から10年くらい前だろうか。

 「私募債」とは、社債の少人数私募債に準じた形で発行するもので、利息制限法・出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律等の関係法令及び各種業法をクリアした民法上の証拠証券、すなわち、金銭消費貸借契約の証書であり、 NPO法人等も発行することができるのだ。まあ、簡単に言えば、赤の他人から借金するということだ。

 ただ、債権のような名前がついているので、本当に私募債が可能なのかよく問い合わせがある。

 私募債を行っている法人は、何かの事業を始める時や施設の改装をする費用に充てる目的で、会員から一口10万円位の貸付を募り、法人は年数%の利息を付けた上で、貸付金を5年後とか10年後に会員に一括返済するという内容だ。もちろん、口約束は危ないので、「金銭消費貸借契約書」を締結している場合が多い。

 しかし、この行為が、法第2条第2項第1号における「営利を目的としないもの」に抵触するのではないか、または非営利の根本原則に反するのではないだろうかという不安がよぎるのだろう。

 そこで回答だが、「営利を目的としない」とは、法人が得た利益を社員に対して分配しないことを指すものであり、 NPO法人が「借入金」に適正な利息をつけて返済する「金銭消費貸借契約」を締結すること自体は、決して営利ではないので安心してほしい。つまりOKだ。

 しかし、問題は2つのパターン。

 一つは、利息の水準が利益の分配に当たるように高い場合だ。市場における通常の利率の相場程度であれば何も問題ないが、この低金利時代に、年10%の金利にしたら、これは営利性があるということになるだろう。

 こういう場合は、政府の公定歩合よりも低く抑えていれば全く問題ないが、もう少し高くても大丈夫だろう。まあ、銀行の不動産ローンくらいの金利程度がよいだろうか。

 さて、ダメなもう一つのパターンとは何か。これが一番引っかかる可能性があるのだ。

 それは、「不特定多数」を相手にした場合だ。当該契約が、一対一の関係で契約を取り交わして受け入れる「借入金」ではなく、「擬似私募債」として複数口に分けて一定の資金を調達するものである場合、 これを「不特定かつ多数の者」に対して募集すると、「擬似私募債」として認められず、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」 第2条第1項に違反する可能性があるのだ。なので、HPやチラシ等を配って大々的に募集することはやめておいた方がよいだろう。

 まあ、会員とか支持者に対して募集するというのが一般的だろうが、それが一番良いということになる。もし不安になったら、所轄庁ではなく、金融庁に確認してみてほしい。

 ただ、いくら身内から募集と言っても、借り入れと同じわけだから、返ってくる見込みのない事業などのための私募債なら誰も応じてくれないだろう。やっぱり、事業に磨きをかけないと!

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成25年6月)

第116号 認定NPO法人はどうなった?

 NPO業界は今、NPO法人の減免申請も終わり、いよいよ決算作業真っ只中という感じだろうか。さすがに今年くらいからは活動計算書にしようということで、かなりの法人が活動報告書の作成にシックハックしていることだろう。何とか頑張ってほしい。

 

 さて、そんな中、改正NPO法から1年が過ぎ、全国の都道府県・政令指定都市の認定・仮認定NPO法人の3月31日現在の状況が別欄の通り発表になった。(別欄はこちら

 

 かつての国税庁認定NPO法人(2001年制度開始)が265法人なのだが、申請数では、認定NPO法人が235法人で、仮認定NPO法人が169法人と、申請の合計数ではすでに国税庁を大きく上回っている。ものすごい勢いで増えていると言っても過言ではないだろう。ただ、実際の認定数では、認定NPO法人が85法人で、仮認定が59法人だから、申請中の法人がほとんどという状況である。

 

 しかし、東京都では本認定が20法人で、仮認定が17法人と他の地域を大きく引き離してリードしている一方、宮城県や秋田県など14の県が、まだ本認定も仮認定も一つも出ていない状況である。さらに、本認定も仮認定も国税庁認定NPO法人もない県が、富山県、福井県、滋賀県、熊本県と4県もあり、それらの県のNPO法人に対する取り組みの遅さが際立っているのも事実である。

 

 4県とも教育県であり、決して県民性ということではないと思うが、やはり行政の指導や広報の仕方に問題があるのではないだろうか。ぜひ挽回してもらいたい。

 

 とはいえ、認定NPO法人制度は、2001年の制度創設以来、たびたび制度改正を行ってきたが、なかなか数が増えず、国会でも大問題になっていたくらいだから、2012年4月から施行された改正NPO法は一定の役割を果たしているといえよう。

 

 私の個人的な感想では、やはり仮認定制度が大きかったと思う。寄付割合が最初から求められる(パブリックサポートテスト)制度では、寄付が集まっている法人しか申請できなかったが、仮認定制度の創設によって、これから頑張って集めようとするNPO法人に元気をもたらしたわけである。実際、仮認定の申請をした法人は、寄付割合などの基準をまだ満たせていない法人がほとんどであるから、そのバリアがなくなった影響は大きいだろう。

 

 だが、3年以内に、寄付割合や寄付数の基準を満たさないと仮認定が取り消されてしまうので、ただやみくもに申請するということはないだろうが、やる気のある法人はぜひ認定NPO法人にチャレンジしてもらいたい。特に仮認定申請は、事業報告や登記などを法律に従ってきちんとやっている、事務局がしっかりしている法人にとっては、事業の共益性さえ問題がなければそれほど大きな障害はないので、仮認定申請を今年の目標の一つに加えてもらいたい。

 

 ただし、事務局員のいないNPO法人のほとんどは、法律通りの期限内に、一つも忘れず登記や届け出をするということはかなり困難なので、その条件がある以上、仮認定NPO法人も夢に終わってしまう。だから、認定NPO法人取得を目標に定める前に、事務局の強化や増員は間違いなく必要だろう。

 

 なので、今年度のNPO法人は、事務局の見直しを最重要課題に挙げてもよいだろう。ボランティア事務員だけでは、対応できない時代が来ていると言っても過言ではない。

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成25年4月)

第115号 NPOに税金は不要?

 春が来た・・というか、今年の春ってあったっけ?

 東京は、ついこの前まで真冬だったのに、いきなり初夏になってしまった。

 でも、春には新しい芽吹きが芽生え、さわやかなフレッシュなイメージがあるが、法人運営にとっては実にいやな季節だ。だっていろいろな税金が飛び交うのだから。

 NPO法人でも同じだ。この季節ならではという法人住民税なんかもあり、とても注意が必要なのだ。

 そもそも法人にとって税金とはなんぞや?

 税務署(国)に支払う法人税や都道府県に支払う法人事業税、法人都道府県民税、市町村に支払う法人市町村民税、消費税、源泉所得税、償却資産税、登録免許税、印紙税などなど・・・考えるだけでも頭が痛くなってくる。

 このうち、NPO法人に特に問題になるのは、法人都道府県民税と法人市町村民税、いわゆる法人住民税だ。

 法人都道府県民税と法人市町村民税には、さらに法人税割といわれているものと均等割といわれているものがあるが、法人税割は、所得(法人税法上の利益に相当するもの)が生じた場合に生じる税金なので、税法上の収益事業を営んでいない限りは納付する義務がない。

 しかし、均等割については、赤字であってもかかる税金で、多くは都道府県民税が年間2万円、市町村民税が年間5万円、つまり合計7万円が必要となるのだ。(東京23区の場合には区民税を都民税に含めて7万円。年度の中途で新設した場合には月割りで計算)

 つまり、収益事業を行っていないNPO法人で、規模の小さく、消費税の納付の義務もないし、職員を雇っていないため源泉所得税の納付の義務もないNPO法人でも、原則として法人住民税の均等割だけは納付の義務があるということになる。

 ただしかし、ここに救いの手が!それが「法人住民税均等割の免除申請」だ。

 これは、収益事業を行っていないNPO法人については、「免除申請書」と「均等割申告書」を同時に提出することで、均等割を免除してくれる制度のこと。ほとんどの自治体にある、何とも素晴らしい制度ではないか。(公益法人にも同様の制度はあるが、一般法人には減免は一切ない)

 しかし、この免除申請の提出時期は、その団体の決算時期に関らず、多くの自治体では4月の1か月間だけなのだ。自治体によっては4月24日までであったり、確定申告の提出期限と同じであったり、多少は異なるが、ほとんどは4月のみ。だから、設立1期目で、まだ決算が終わっていなくても、3月31日以前に設立していれば、この時期に免除申請を提出する必要があるのだ。

 しかも、免除申請の提出は毎年だから、忘れると大変なことになってしまう。(ただ、東京都税などは1度提出すればその後の提出は免除されるので、そういう自治体はありがたい。)

 もしこの期間に提出しなかった場合には、原則として均等割は免除されないことになるので、「うっかり忘れて7万円」という、実に痛い制度ともいえる。

 もちろん、法人税法上の収益事業を行っている場合には減免はされないので、均等割の申告は、他の税金と同様に決算終了後原則2ヶ月以内に行ってほしい。法人税は赤字であれば0円だが、こちらは、赤字であったとしても収益事業を行っていれば、免除されないので注意が必要だ。

 もう一つ注意が必要なのは、都道府県民税や市町村税は、税務署では扱っていないということ。これは税務署ではなく、都道府県税事務所や市町村に出向くことになるので、間違わないでほしい。

 そして、いい話は向こうからは来ないことが多く、3月に都道府県や市町村から減免申請の用紙が郵送されてきていると思うが、届いていないときは自分から取りに行って申請しなければならないので、何も届かなかったから住民税は免除されたと思わないでほしい。行かなかった自分が悪いということで、ペナルティが7万円だ。税金というのは知っている人だけが得をするという、ものすごくずるい制度であることを忘れてはならない。

 どこかの政治家ではないが「記憶にございません」は、税金の世界では通用しないのだ。

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成25年3月)

第114号 来る・ビル?

 あのビル・ゲイツが軽井沢に別荘を建てているらしい。ウィンドウズで巨万の富を独り占めして世界一のお金持ちとなったが、さっさとそのマイクロソフトを他の人に任せ、自分は財団法人を設立して、今や世界一の篤志家として世界平和や人道支援に力を注いでいるあの彼がだ。

 個人的には、私が公益活動に引き込まれていったのも、そんな彼のかっこいい人生観にあこがれたからであり、かなり尊敬している人物であるが、なんで軽井沢なのだろうか?

 敷地は約2000坪、建物は延600坪を超え、露天風呂が8つ、ヘリポートもプールもついているらしい。そりゃあ、新幹線で来るわけないか・・・。どうせならヘリコプターなんかにせず自家用ジェットのための空港も作ったらよいのに、と余計なことも考えてしまう。総工費は約10億円とも60億円とも言われているが、完全に秘密になっているので誰もわからない。

 しかしだ!

 原発事故で世界から嫌われているこの日本を今、彼が選んでくれたのはうれしいではないか。

 安倍総理や自民党内閣の誕生よりもよっぽどこっちの方が日本の先行きを明るく照らしてくれるような気がするのは私だけであろうか。日本も捨てたものじゃないぞ!

 噂によると、彼の尊敬するジョンレノンが軽井沢を愛していたから選んだらしいが、ただ遊びに来るだけでなく、そこに住んでくれないだろうか? 永住!

 そうしたら、アメリカも日本のことを今まで以上に必死になって守ってくれるだろう。さらに、今や世界最大の助成財団と言われているあのビルゲイツ財団の活動がかなり日本に投下されるような気もするのだ。ビルゲイツ財団の理事には約3兆円をこの財団に寄付した、世界第3位の富豪であるバフェットさんもいる。3兆円をポンと出す人って・・・・。凄すぎる。

 バフェットさんも日本に興味を持ってほしいなあ。どうせなら、福島県あたり、特に原発地域をすべて買い取って別荘でも何でも建ててくれたら、世界の風評も変わってくるのではないだろうか?

 いずれにせよ、ビルゲイツを世界一の金持ちと穿った気持ちで見ず、世界一の篤志家であり慈善家なのだから、皆で歓迎しようではないか。ようこそ! おいでやす! めんそーれ!

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成25年2月)

第113号 政治って何だ?

 新政権が誕生してから1ヶ月経とうとしている。

 しかし、国民はなんてわかりやすい行動をとるのだろうか。民主党政権でちっとも景気がよくならず、自分には何のメリットもなかったからといって、今度はみな自民党へ・・・。あまりにもわかりやすすぎる。

 本当は、民主党が悪かったのではなく、政権能力もない政党に票を入れた人たちが悪かったのだ。だから、自分たちが招いた災害を人のせいにして、今度は逆に流れるなんてのは、まったく無責任すぎると思う。だいたい前回の選挙で民主党に票を入れた人たちは、政権能力ではなく、政治判断能力が欠如しているのだから、そういう人たちが何の反省も勉強もせずに、またむやみに投票するというのは、とっても危険だ。1回はペナルティで投票しないというのが正しい選択ではないかと思う。もし、今度の自民党政権がどうしようもないことをして、政治も経済もめちゃくちゃになったら、手のひらを返した人たちの責任は重い。もう選挙に参加してはいけない・・・なんていうのはどうだろうか。もちろん冗談だが。

 さて、新政権はとにかく景気浮揚が至上命題だ。景気がよくなるためだったら、何でもありという雰囲気もある。もちろん、それはそれでよいのだが、市民活動はどうなるのか。

 かつてイギリスでは、「ゆりかごから墓場まで政策」でぼろぼろになったNPOなどの市民活動が、その政策が崩壊すると息を吹き返し、ものすごいパワーを得て活動が盛んになり、しかし、政権交代で労働党が失脚すると、また下火になりつつあるという、まさに「ジェットコースター」現象を起こしている。そう考えると、日本の市民活動は革新系労働系の政権が崩壊したわけだから、保守系政権で下火になるというのが一般論だろう。

 しかし、最近の保守系政権はちょっと違うのだ。自分たちの仲間は誰かという、壁を一切作らない。昨日の敵は今日の友、という風潮がある。だから、今まではあんまりNPOに理解がない政党だったが、これがチャンスとばかりに逆に何でも言うことを聞いてくれそうな気がするのだ。だって、民主党の牙城である連合に急に近寄ったり、一度は敵になった医師会などを今度は仲間にしようとしていることからもよくわかる。

 今後、民主党政権というのは永遠にないだろうから、今度はNPO業界も、猫撫で声で自民党に近づいてみるとよいだろう。もしかしたら民主党政権よりもずっとサービスしてくれるかもしれない。「市民活動元年」なんて言い出しそうな勢いだ。

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成25年1月)
過去のコラムはこちら(旧サイト)