福島達也理事長コラム
第60号 ダンスに学ぶ「NPOに欠けているもの」
 先日、テレビで全日本高校・大学ダンスフェスティバルという番組を見た。高校生や大学生が心を一つにして、全員が音楽に合わせて華麗かつ優雅に動き、踊り手たちの一糸乱れぬ息の合った動きは、見ていて本当に気持ちのよいものであった。

 私は、一瞬これがNPOに欠けているものではないかと思ってしまった。NPOというのは、ある決まったミッションに向かって人が集い、さまざまな活動を参加者が協力して行い、公益の増進に寄与するものだが、最近は一糸乱れぬという団体がとても少なく、一層乱れているように感じるのだ。

 そもそも、NPOというのは、誰でも参加でき、入会を制限してはいけないという原則がある。しかし、これが拡大解釈されていて、どんな人でも入会させなければならないという間違った認識を持っている所轄庁の職員もいるのだ。

 ミッション遂行に障害のあるような人まで入会させていいはずがない。あくまでも、NPO法では、不当かつ差別的な入会制限はいけないという意味であり、誰でも入会させろといっているのではないのだ。

 例えば、雅楽の技術向上や普及啓発をするNPOの場合、雅楽の技術向上や普及啓発に力を発揮するような人たちだけで集うことは、決して不当でも差別的でもない。

 それなのに、勘違いして、興味がある程度の人でも、なんとなく参加したいと思った人でも入会させるのがNPOだと思っている人が後を立たない。

 こうした間違った認識が悲劇を生み、技術向上を目的にしていた団体が、ただのお遊び団体になってしまうということもある。それで魅力がなくなり、プロは去っていき、どこにでもあるような魅力のない団体に成り下がる。結局会員も去り、解散することになってしまうのだ。そういう団体が最近急増している。

 人を感動させたり、人を動かしたりすることのできるNPOというのは、活動している人たちの間に温度差があってはいけないと、つくづく感じてしまう今日この頃である。

特定非営利活動法人 国際ボランティア事業団
理事長 福島 達也
(平成19年9月)

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