● 福島達也の理事長コラム ●
第112号 冤罪大国日本
 NPO法人を設立したい人から、「こういう活動をしているのだが、NPO法人になれるか?」という質問がよく来る。確かに、NPO法人の事業というのはあいまいなところがあり、20種類の活動分野が法で定められているが、こじつければどこかに該当するし、まともに考えれば該当しないとも考えられるのだ。
 だから、専門家に聞きたい気持ちはよくわかるが、本当のことを言うと答えは「設立趣旨書や定款の目的等に公益性のある書き方をすれば必ず認証されるし、会社と同じような利益追求的なことを書けば通りませんよ」なのだ。
うまく書けば通るけれど、うまく書けなければ通らない・・・などという制度ははっきり言って最悪だと思う。しかし、公益法人の認定申請も同じだが、審査は書面だから、国語力のあるものが得をする制度になっているのだ。まったくおかしなものである。
 とはいえ、こちらも仕事だから依頼されれば、その団体の良い面をクローズアップして説明をたっぷりと書き、あまり大した公益性のないことはさらっと書くという癖がついてしまっている。これも職業病なのだろうか・・・。
 しかし、職業病で済まされないことが現実おきている。
 先日、横浜市のホームページで小学校への襲撃予告を書き込んで威力業務妨害容疑で明大生が間違って逮捕された事件があったが、警察は「否認したら少年院送りになる」と自白を強要し、検察官も同調し、最終的には家庭裁判所に送致され、保護処分の判決まで出されていた。
上申書には、HPに書き込まれた「鬼殺銃蔵」という名前について「鬼殺は日本酒の商品名、13が不吉な数字だからジュウゾウと読ませようとした」「楽しそうな小学生を見て自分にない生き生きとしたものを感じ、困らせたかった」とのもっともらしい動機が書かれているが、まさに、警察官はオタク大学生になりきって、見事なまでの国語力を発揮しているのだ。日本の警察も検察も、国語力は抜群に優れている。世界最高といっても過言ではない。
ただ、不自然な通信履歴を警察当局は把握したのに捜査に生かさず、明大生を救済するどころか、自白誘導、強行突破、検察に送致、起訴、裁判まで行い、明大生は、かわいそうに既に大学を退学してしまったというのだ。
冤罪がばれて、すぐに釈放し、両親や本人にお詫びしたというのだが、お詫びで済ませてよいのか。未来ある大学生の人生をボロボロにした警察官と検察官は何の罪にも問われないのはおかしくないか。逆に人道的観点で厳しい国家だったら、警察官等は逮捕され、禁固刑になっているだろう。東電OL殺人事件の冤罪もそうだったが、検挙率ばかりに気を取られて、罪のない人を罪に陥れる傾向が高まっている。これでは、世界最高の検挙率を自慢しているが、犯罪の半分近くは冤罪だと思われてもおかしくない。
放火犯が捕まった時に必ず「むしゃくしゃして・・・」と犯人は言うらしいが、そんな言葉を使う人は今時どこにいるだろうか。まさに警察用語ではないのか。わたしは「むしゃくしゃして」が出てくると、「ああ、これも冤罪かもしれない」と思うようにしている。


特定非営利活動法人 国際ボランティア事業団
理事長 福島 達也
(平成24年12月)

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